一億円のさようなら ( 2018 白石一文 ) 読了
あらすじ
夫・鉄平は偶然に妻・夏代が伯母の遺産30数億円を婚前から持っていた事を知る。20年以上苦楽を連れ添った妻の秘密に加え、鉄平だけが家族の蚊帳の外に置かれ、何も知らされていぬ事を知った鉄平は強い疎外感を感じてしまうのでした。
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自分以外の家族全員が「自分(夫であり父)にだけ秘密裏に好き勝手」していることを知ってしまった時、家族への義務は消え、妻への信頼も消えてしまった中年男性の「妻の秘密を足掛かりにした再生」物語です
妻の最後の提案に「自分以外の何人も我が意で変える事は出来ない」という不毛を感じたのは私だけ?
特に金沢について綿密な風景描写がされているのだけれども、あいにくと金沢は未到の地なので今一つピンと来ない...
それでも雪の風景の描写には日本海側の北国イメージとは異質な性質であることが分かるし、何よりも食の豊富さと質の高さは伝わって余りあるほど伝わり、頭の中が寿司になり過ぎて困ってしまう。
作中、特に引き合いに出たような音楽や映画、本などはなかったように思う
[ wrap-up ]
お金とは選択肢です。豊富な選択肢とは経済的背景がなければ提案も選択もできません。
主人公の鉄平が失業したタイミングで、妻はかつて不倫相手であった男に夫への説明とは矛盾する「支出」をしていることが、会社における事故で重体となっていた部下の転職話の中で察してしまうシーンの絶望感を際立たせたのは、妻の隠し財産について夫婦で話し合った時の一人親で鉄平を育てた母への最後の孝行が経済的事情で出来なかった悔恨と繋がります。
まぁこれは絶望しますよね、(絶望)しない男性はいないと思う。
手切金のような一億円で鉄平は事業を成功させ、元金までお金を戻して、金沢まで押し掛けてきた妻へ通帳を差し出します。このシーンで妻は「もう一度やり直したい」と「ある提案」を差し出して鉄平へ伝えます。このシーン、本当に残酷というか、女の怖さが強烈です。
鉄平は何を選ぶのだろう?

